Web3.0完全解説
Web3.0とは?
Web3.0とは、ブロックチェーン技術によって実現する「分散型インターネット」をあらわす概念のことです。
そもそも、インターネット世界は、誕生初期のWeb1.0から現在のWeb2.0へと、ユーザー自らが参加できる姿に移行してきました。
SNSに代表されるように誰でも情報を発信できる一方で、GAFAMなどのプラットフォームを提供する大企業に情報と権力が集中している、中央集権的な構造をとっています。
Web3.0は、そんなWeb2.0の反省を踏まえ、次世代のインターネットの姿をあらわす言葉として登場しました。中央集権型から脱却して、個人の情報を個人がそれぞれ分散的に管理する世界、それがWeb3.0の最大の特徴です。
表:Web1.0~3.0の違い
時期 | コンテンツの動き | |
---|---|---|
Web1.0 | 1990年~2005年 | 一方通行(例:テキスト主体のWebサイト等。情報が一方向に配信) |
Web2.0 | 2005年~現在 | 双方向(例:SNS等で双方向のやり取りが可能) |
Web3.0 | 次世代 | 分散(例:NFT等。データを分散管理することで、管理者に依存しない) |
今回は、そのWeb3.0にはどのような技術があり、どのように使われているのか、実際の事例を用いて紹介します。
Web3.0に用いられる技術例
Web3.0という世界の実現のためにそのインフラとして支える技術はたくさんありますが、ここでは代表的な以下の4つを紹介します。
・NFT:唯一無二性の証明がなされたデジタルデータ。デジタルデータに資産価値を持たせる。
(例:NFTアート「Everydays. The First 5000 Days」
株式会社NTTデータ×バチカン教皇庁図書館/バチカン図書館×Web3支援プロジェクト、
株式会社日立製作所×ニッセイ情報テクノロジー株式会社/顧客主権型データ連携システムの共同検証)
・DAO:分散型自律組織。管理者不在でも事業やプロジェクトを自律的に動く技術。
(例:仮想通過「ビットコイン」、Uniswap、山古志DAO、
PwCコンサルティング合同会社×国立大学法人筑波大学/スマートシティ連携のフレームワークと教育プログラム)
・DeFi:ブロックチェーンを基盤にした分散型金融サービスの総称。中央集権的な管理者を介さない。
(例:DEX、レンディング、イールドファーミング)
・GameFi:ゲームとDeFiを融合させたデジタルゲームの総称。ゲームを通じて収益を得ることが可能。
(例:The Sandbox、STEPN、SleeFi)
それぞれについて、より詳しくご説明します。
NFT
NFTとは、非代替性トークンのことです。非代替性、つまり唯一無二性の証明がなされたデジタルデータのことを指します。唯一無二性の担保は、資産価値に直結します。
2021年、「Everydays. The First 5000 Days」というNFTアート作品が初めてオークションにかけられ、約75億円で落札されました。このニュースは、デジタルデータが高い資産価値を持つ、初めての実例として世界中に大きなインパクトを与えました。
これから説明するどの技術も、NFTを前提に発展したものであり、Web3.0の実現にあたり、NFTは必要不可欠なインフラであると考えることができます。
DAO
DAOとは分散型自律組織のことで、非中央集権かつ、匿名の参加者が自律的に動くことで機能します。これは、特定の所有者や意思決定を行う中央管理者が存在しないという点で、従来の組織形態とは根本的に異なっています。
全ての意思決定は、参加者が投票権「ガバナンストークン」を購入して投票し、多数決によってなされます。また、運営による利益は、参加者の貢献度に応じて、平等に配分されます。
このような運営のされ方は「スマートコンタクト」と呼ばれ、全て自動で処理することができます。
運営の透明性が高く民主的な組織形態であるという意味で、DAOは理想的ですが、中央管理者の不在ゆえの、「責任の所在の曖昧さ」が最大の欠点となっています。
・ビットコイン:世界初のDAOによって運営されている暗号資産。有志のマイナーたちによるマイニング活動によって維持・管理されている。
・Uniswap:世界最大のDAO。DEX(暗号資産取引所)としてトップクラスのシェアを誇る。
・山古志DAO:山古志村を再生させるための、地域活性化プロジェクト。NFTをデジタル住民票として発行。
DeFi
DeFiとは、分散型金融サービスの総称のことで、簡潔に言えば、DAOが「金融サービス」に特化したものです。
よって、銀行や企業などの管理者を介さず、ユーザー同士が直接取引をおこなうことができます。また、すべての取引記録はインターネット上で公開され、誰でも確認が可能です。そのため、既存の金融サービスにはない透明性が担保されています。
【技術使用例】
・DEX(分散型取引所):暗号資産の取引を行う取引所。
・レンディング:仮想通貨を貸し出し、借り手から利息を受け取ること。
・イールドファーミング:2種類の仮想通貨をDEXに預け入れて利息を受け取ること。
GameFi
GameFiとは、ゲームとDefiを融合させたデジタルゲームの総称です。ゲームを通じてプレイヤーが収益を得ることができます。
GameFiが一躍話題になったのは、「Axie Infinity」というゲームが発端です。ゲーム自体は、モンスターを育成しながらゲーム内で戦わせるシンプルなものです。しかし、バトルに勝利するなどゲームプレイの目的を達成することによって、報酬を受け取ることができます。
この報酬額が、新興国の1日当たりの平均賃金である約30ドルを超えたことで、ゲームで生計を立てる人たちが現れ、特にコロナ禍で職を失った人たちにとって新しい就業機会となりました。
このように、ゲームを遊びながら稼ぐ仕組みをPlay to Earnと呼びます。現在では、Move to EarnやSleep to Earnなど、多様なジャンルが生まれています。
・The Sandbox:Play to Earn。世界的人気を誇るメタバースゲーム。仮想空間内の土地を売買で報酬獲得。
・STEPN:Move to Earn。専用のユニーカーを用意してウォーキングやランニングをすると報酬獲得。
・SleeFi:Sleep to Earn。毎日の睡眠時間と品質に応じて報酬獲得。
コンサル業界やSIerの取り組み事例
Web3.0の4つの主要な技術についてご説明しましたが、コンサル業界やSIerにおける取り組み事例を紹介します。
【紹介事例】
・株式会社NTTデータ×バチカン教皇庁図書館:バチカン図書館×Web3支援プロジェクト
・株式会社日立製作所×ニッセイ情報テクノロジー株式会社:顧客主権型データ連携システムの共同検証
・PwCコンサルティング合同会社×国立大学法人筑波大学:スマートシティ連携のフレームワークと教育プログラム
株式会社NTTデータ×バチカン教皇庁図書館:バチカン図書館×Web3支援プロジェクト
株式会社NTTデータは、2023年2月20日から3月31日まで、バチカン教皇庁図書館と協力して、デジタルコンテンツとNFTを組み合わせた文化活動支援「バチカン図書館×Web3支援プロジェクト」の実証実験を行いました。
これは、Web3技術によって、バチカン図書館と、その支援者の新たなコミュニティーを形成する試みです。
具体的には、まずオンライン上でバチカン図書館への支援者を募集し、SNS投稿による認知拡大を支援活動と位置付け、それに対する返礼品としてNFTを採用しました。そのNFTを所有することにより、支援者はバチカン図書館が保有する希少な文化遺産にWebサイトを通じてアクセスすることができます。
実際に、419名の支援者によるコミュニティが形成され、NFTを活用したオンラインコミュニティー形成の有用性が確認することができました。
”NFTという証明書によってデジタルアセットを活用したマネタイズが一時的に実現するのではなく、展開していくにつれそのNFTによる証明書を活用し、新しいコミュニティー形成が可能になります。 はじめは1対1の“線”のつながりだったものが、展開するにしたがって“面”のつながりになっていくことこそ、Web3コミュニティープラットフォームの目指す形だと考えています。”
引用: 株式会社NTTデータ/「バチカン図書館×Web3支援プロジェクト」の展開について
NTTデータは、今回の実証実験で使用したプラットフォームに改良を加えた上で、国内および海外におけるコミュニティ構築事例において、今後展開を進めていくことを表明しています。
参照:
株式会社NTTデータ/
NFTを活用して支援者とバチカン図書館をつなぐオンラインコミュニティー形成の実証実験を開始
株式会社日立製作所×ニッセイ情報テクノロジー株式会社:顧客主権型データ連携システムの共同検証
2022年、株式会社日立製作所はWeb3.0の時代に向けた取り組みとして、ニッセイ情報テクノロジー株式会社と共同で、顧客主権型データ連携システムの検証を開始しました。
この検証では、Web3.0を「顧客主権のもとデータを管理、所有することと」と定義しています。その上で、顧客主権型データ連携システムとは、顧客が自分に最適なサービスを享受するために、顧客自身のデータを安全安心に企業に開示する仕組みのことです。
具体的には、顧客が管理しているライフデータや個人属性に関するデータから必要なデータを保険会社に開示することで、顧客が最適な保険のレコメンドを受けるという保険顧客体験を例としています。
参照:
株式会社日立製作所・ニッセイ情報テクノロジー株式会社/
ニッセイ情報テクノロジーと日立、Web3時代に向けて
PwCコンサルティング合同会社×国立大学法人筑波大学:スマートシティ連携のフレームワークと教育プログラム
2021年、PwCコンサルティング合同会社は、「スマートシティ連携のフレームワークと教育プログラム」に関して、国立大学法人筑波大学と共同で研究を開始しました。
デジタルガバメントとは、行政に関する全てがデジタル社会に対応した状態のことをいいます。
具体的には、自律分散型社会の到来、つまりWeb3.0の時代に備えた準備の必要性から
「未来投資フレームワークの開発」
「デジタル広域連携モデルの開発」
「デジタルガバメント人材の育成のための教育カリキュラムの開発」
この3つをテーマに掲げ、デジタルガバメントにかかるナレッジをDAOに集積して共有することを目指しています。
参照:
PwCコンサルティング合同会社/
PwCコンサルティング、筑波大学とデジタル・ガバメント実現に向けた
「スマートシティ連携のフレームワークと教育プログム」に関する共同研究を開始
富士誇(フジコ)の見解
現在、Web3.0はまだ黎明期である一方で、DeFi,GameFiなど、既に多くの新しいビジネスモデルを誕生させています。
コンサル業界やSIerにおいても、事例を見れば分かるように、関連のプロジェクトの多くが開始した段階です。
それだけWeb3.0の専門人材が必要とされるタイミングであり、現在転職をお考えの方は、新しいスキルとしてWeb3.0への知識を身につけることが大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
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- PwCコンサルティング合同会社/Future Strategist
- PwCコンサルティング合同会社/デジタルイノベーション担当コンサルタント
- 有限責任監査法人トーマツ/web3に関するアドバイザリー業務/新規サービス・プロダクト開発業務(コンサルティング職)
- 有限責任監査法人トーマツ/web3の技術に係る調査研究業務
「コンサルティングファーム/エンジニア転職なら富士誇にご相談ください!」
記事作成者:株式会社富士誇 海野 愉里