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技術記事 2024.03.14

ERPの先駆者SAPとは?2025年に向けたキャリアアップのチャンス

Tags : 技術記事

SAP ERPで実現できること

SAP(エス・エー・ピー)はSAP社製の統合基幹業務システムです。
バリューチェーン・業務プロセスを一気通貫に網羅することが可能であるため、部門ごとに新たなシステムを導入・カスタマイズすることなく業務の効率化を図ることができます。

◆代表製品4種

・SAP S/4HANA
 現在の主流となる第四世代となるSAPのERPパッケージ。処理の高速化やクラウドへの対応が特徴的である。
・SAP ERP Central Component(ECC)
 S/4HANAの1世代前となるパッケージ。2025年(2027年)のサポート終了が予定されている。ECC6.0やERP6.0といった名称でも呼ばれる。
・SAP Business ByDesign
 中堅規模の企業向けパッケージ。S/4HANAよりも導入障壁の低いパッケージとして、一般的な中堅規模の企業のニーズに沿った機能を提供する。
・SAP Business One
 個人または中小企業向けのパッケージ。必要に応じて機能を追加する構成と、最低一人からライセンス購入可能なサービス設定により、ニーズに応じた小規模利用を可能にする。


SAP製品に含まれる機能(モジュール)には以下のようなものがあります。

機能モジュール:経理や人事、生産管理といった基幹業務に係る機能を持ち、それらの効率化を可能にする機能。主に3つに分類でき、代表的なもので9種類のモジュールがある。
 ・会計系
  財務会計(FA)、管理会計(CO)、プロジェクト管理(PS)
 ・ロジ系
  調達/在庫管理(MM)、販売管理(SD)、品質管理(QM)、工場保全(PM)、生産計画(PP)
 ・人事系
  人事管理(HR)
 実用例:Motor Oil Group社とAccenture社の協働による保守最適化ヤマハ発動機株式会社とPwCコンサルティング合同会社の協働事例

サブモジュール:機能モジュールの中でも、さらに細分化した機能を持つモジュール。以下は財務会計(FA)に含まれるサブモジュール例。
 総勘定元帳(FI-GL)、買掛金(FI-AP)、売掛金(FI-AR)、資産会計(FI-AA) 等
 実用例:株式会社三井ハイテックとNTTデータグローバルソリューションズの協働事例

次の章より、SAPについてより詳しく説明いたします。

SAPとは

引用:Unsplash

SAP(エス・エー・ピー)は1972年創業となるドイツ発の多国籍企業。””System Analysis Program Development””の略称であり、業務部門を跨いだデータ管理の一元化を可能にするERPソフトウェアにより世界的シェアを誇る企業です。

157カ国以上の国と地域に10万5000人の従業員を抱え、クラウドユーザーベースには2億8000万人のユーザーを抱えるSAPはERPソフトウェアのグローバルスタンダードを確立した企業として知られています。

ERPとは

ERPとは”Enterprise Resource Plannning”の略称であり、日本語では企業資源計画とも呼ばれるものです。より具体的には経理・財務や人事といったコーポレート業務から、生産・調達・販売といった一連の流れについて、企業の資源を総合的に管理し、最適化を図ることを意味します。

例えば製造業のA社で以下のような状況にあるとします。

人事部の人材管理でB社のシステムBを利用する中、経理部の経費管理ではC社のシステムCを利用、そして製品を製造する工場ではD社のシステムDを利用するといった状況です。
この状況では、システムB、システムC、システムDそれぞれに情報が蓄積されるため、例えば経理上の処理において製造上の情報が必要となった場合、システムDのデータをシステムCに移す必要があります。
システムCとシステムDはそれぞれC社、D社のスタイルにて設計されていることから、円滑なデータの移行・共有が難しく、時に社員が手作業で移行を行うといった手間も生じうるのです。
同じような事象は、人材管理上取り扱われる給与情報を、経理部にて取り込みたい場合にも発生します。
ERPは各業務にて使用するシステム同士の連携を円滑化し、データの一元的な管理を可能にすることで、全体の効率化を図ると言えます。

SAP ERPでは各業務に応じてモジュールと呼ばれる枠組みが設定されています。モジュールは機能ごとに分類されるほか、対象業界ごとに分類されることもある枠組みです。またモジュールよりも更に細分化された枠組みとして、サブモジュールが設定されています。

機能モジュール例

モジュールは3つの系統に分類でき、代表的なもので9種類のモジュールがあります。

会計系

・財務会計:Financial Accounting(FA)
 外部に向けた会計報告に対応する。取引先や銀行といったステークホルダーに対して企業の経営の健全性を示すためのもの。

・管理会計:Controlling(CO)
 社内に向けた会計報告に対応する。自社の状況や方針を共有するためのもの。

・プロジェクト管理:(PS)
 部署や業務を跨いで同時多発的に行われるプロジェクトについて、全社的な管理を可能にするためのもの。

ロジ系

・調達/在庫管理:Material Management(MM)
 仕入れ側にて発注依頼から請求書まで管理するもの。受注と在庫の密接な関わりから、在庫の管理も可能とする。

・販売管理:Sales and Destribution(SD)
 販売側にて見積もりから出荷まで管理するもの。懇意の取引先への割引適用や無料サンプルの出荷など柔軟な管理を可能とする。

・品質管理:Quality Management(QM)
 品質計画の策定や品質検査を管理するもの。検査指示の登録から検査結果の表示まで検査の円滑な実施を可能とする。

・工場保全:Plant Meintenance(PM)
 設備のメンテナンスを管理するもの。検査や保全、修理について必要とされる工程やスケジュールを管理することで保全作業の円滑な実施を可能とする。

・生産計画:Production Plannning(PP)
 生産計画の策定や製造指示を管理するもの。需要や販売の予測を立てながら円滑な製造を可能とする。

人事系

・人事管理:(HR)
 人事配置や給与、出張などを管理するもの。適切な人事の配置とその把握を通した適切な運用を可能とする。

サブモジュール例

また、財務会計(FA)の元には以下のようなサブモジュールが設定されています。

  • 総勘定元帳:General Ledger(GL)
  • 買掛金:Accounts Payable(AP)
  • 売掛金:Accounts Receivable(AR)
  • 資産会計:Asset Accounting(AA)

コンサル業界やSIerにおける”SAP ERP” 

前述の通りデータの一元的な管理を可能にするSAP ERPですが、導入においてはいくつかの障壁が存在します。例えば各部署にて既存の業務システムとマッチした業務フローが確立されている中、SAP ERPの導入により既存の業務フローが適切に機能しないリスクがあるのです。

またSAPではアドオン開発にて独自言語となるABAP(Advanced Business Application Programming)を採用していることから、人材の育成から現場社員の適応まで一定の障壁が想定されます。

ERPソフトウェアのグローバルスタンダードを確立してきたSAP ERPについて、導入を望む企業は多く存在する一方、それらの導入に苦労する企業も多いことから、多くのコンサルティング会社やSIerは支援に乗り出しています。

SAPジャパン株式会社ではSAPビジネスへの貢献度や顧客満足度が高い企業など、SAPソリューションの分野で質の高い取り組みを行うパートナー企業について「SAP AWARD OF EXCELLENCE」として賞を授与しており、第26回目となる「SAP AWARD OF EXCELLENCE 2023」ではCustomer Success部門として日本アイ・ビー・エム株式会社やアクセンチュア株式会社、PwCコンサルティング合同会社など、名だたるコンサルティング会社が賞を受賞しています。

例えばPwCコンサルティング合同会社ではEnterprise SolutionとしてソリューションとしてのSAPの活用を打ち出した部署を構えるなど各コンサルティング会社は力を入れており、特にSAP ERPについての知識・経験を大きく活かせるSAPコンサルタントへのニーズが存在しているのです。

“地政学リスクの高まりや、コロナ禍による生活スタイルの変容、業界再編など、変化の激しいビジネス環境下にあるクライアントに対して、SAPを中心としたソリューションで企業変革を支援する組織として、エンタープライズソリューションは2022年7月に発足しました。”

引用: PwCコンサルティング合同会社/部門紹介 Enterprise Solution  

一方で、既にSAP ERPに関わる方の中には、自身の能力をどのように示せば良いかお困りの方もいるでしょう。

SAPコンサルタントとして活躍する上で自身の能力を客観的に提示可能なものの一つに、SAPが公式に提供する資格制度があります。同社がSAP Certificationとして提供する認定資格制度は複数の学習材料とともに有料で提供されるものです。

モジュール別の資格など知識分野の異なる複数種類の分野についてそれぞれ資格が用意されています。特にSAPでは以下の2種類3段階のレベルを設定することで資格者のスキルを可視化しています。

SAPが設定する資格レベル

  • Intermediateレベル
    • アソシエイト認定資格:SAPのソリューションについて基本的な知識要件を有するレベル
    • スペシャリスト認定資格:アソシエイト認定資格のレベルに加え、統合コンポーネントの具体的な役割についても知識を有するレベル
  • Advancedレベル
    • プロフェッショナル認定資格:具体的なプロジェクトにおける経験含め、SAPソリューションにについて非常に詳しい知識を有するレベル

SAPの導入事例

具体的なSAP導入事例についてご紹介いたします。

Motor Oil Group社とAccenture社の協働事例
株式会社三井ハイテックとNTTデータグローバルソリューションズの協働事例
ヤマハ発動機株式会社とPwCコンサルティング合同会社の協働事例

Motor Oil Group社とAccenture社の協働事例

製油所を有するMotor Oil Group社では、そのパフォーマンスを監視しながら、突発的なダウンタイムの発生を防ぐことで保全コストを抑制したいと考えていました。同社ではAccenture社との協力によりSAP ERPの機械学習による予測分析を可能とするパッケージを導入し、コンプレッサーの圧力、温度、振動センサーといった項目をもとに特定のしきい値を超えるタイミングの予測を可能にしたと言います。

参照:SAP社/Customer Story: Motor Oil Group

株式会社三井ハイテックと株式会社NTTデータグローバルソリューションズの協働事例

超精密加工技術を有する三井ハイテック社では個別に行われる最適化や属人化による全体的な生産効率の低下に悩んでいたといいます。同社ではNTTデータグローバルソリューションズ社との協力によりSAP ERPモジュールの中でも財務会計(FI)、管理会計(CO)、在庫/購買管理(MM)、生産管理(PP)、販売管理(SD)の5つのモジュールを導入しました。ビッグバン方式とも呼ばれる一括移行方式により11ヶ月という短期間での導入に成功し、導入の結果として受注方式ごとに異なる製造プロセスについて原価管理の標準化が可能になったほか、生産効率の飛躍的向上が実現したといいます。

参照:株式会社NTTデータグローバルソリューションズ お客様事例/株式会社三井ハイテック様

ヤマハ発動機株式会社とPwCコンサルティング合同会社の協働事例

バイク・スクーターにて世界的人気を誇るヤマハ発動機社では、その拠点が世界中に存在する中、全社的なDX戦略を掲げていました。グローバル・デファクト・スタンダードとしてSAP S/4HANA注目した同社では、グローバル規模での業務の標準化と効率化、そしてデータドリブンな経営の実現を目指していたのです。PwCコンサルティング合同会社ではその導入を支援し、SAP ERPの導入により販売から流通、購買や生産、会計にわたる5つの業務領域について、世界中の140を超える拠点について経営や運用に係る情報の一元化と可視化を可能にしたといいます。

参照:PwCコンサルティング合同会社/
PwCコンサルティングとSAPジャパンが、ヤマハ発動機のDX戦略の一環として、
SAP S/4HANAを用いたグローバル標準業務・システム導入による経営基盤改革を支

富士誇(フジコ)の見解

近年SAPを取り扱う人の間では「SAP 2025年問題」が話題に上がっています。これは2024年3月現在SAP ERPの最新版が「SAP S/4 HANA」であるのに対し、多くの企業が一世代前の製品「SAP ERP6.0」をまだ使用しています。この「ERP6.0」のサポート期限が2025年に迫っている※ことが問題視されています。
※一定の条件のもと2027年へ延長可能

サポート終了によりトラブル発生時が対応が難しくなることから、一世代前ERP6.0のシステムを利用する企業にとってはSAP S/4 HANAの早期導入が目下の課題となっています。他の企業が開発するERPシステムも複数存在する中、SAP ERPの人気は依然として根強く、サポート終了期限が迫る中SAPコンサルタントへのニーズは一段と高まると予測できる状況です。

コンサルファーム・SIerへと転職するには非常に良いタイミングだと言えるのではないでしょうか。

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株式会社NTTデータ/【法人】SAP導入コンサルタント(課長代理・主任ポスト)

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記事作成者:株式会社富士誇 井田 新

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