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コンサルティングファーム転職
2023.12.26

監査法人のコンサル部隊とコンサルティングファームの違い

監査法人とは?

監査法人とは、会計監査を目的とした法人のことを指します。公認会計士が所属しており、依頼を受けた企業から財務諸表の適正性をチェックすることが主な業務です。

監査法人が公正な立場から財務の監査を行うことにより、財務諸表の信頼性が担保されます。そのため、金融機関や投資家などが財務諸表を見て安心して投資判断を行うことができ、企業が円滑な資金調達を行うことに繋がるのです。

一方で、監査法人では財務に関連するコンサルティング業務も行っています。

一般的なコンサルティング企業が手がけている企業戦略、経営、ITなどのコンサルティングとは少し異なり、アドバイザリー職と呼ばれる部隊が、「守りのコンサル」として仕事をしています。

詳しく説明していきましょう。

監査法人のコンサル部隊「アドバイザリー職」とは?

監査法人のアドバイザリー職は、会計士ではなく各業界や分野の専門知識を持ち合わせたコンサルタントを指す職種です。

企業や部門によっては、会計士の資格を持った社員による会計知識や経験、グローバルネットワークを生かしたアドバイザリー業務をすることもありますが、アドバイザリー職は企業の健全な運営や成長に向けたアドバイスをメイン業務としています。

クライアント企業が抱える様々な課題に対し、調査や解決策の提示などを行う点は、まさに「コンサルティング」の領域と言えます。

最近では、大企業だけではなく、地方の中小企業も積極的にコンサルティングサービスを活用するようになってきているため、元々監査業務で関係性のある監査法人がコンサルティング業務も受け持つ場面が増えてきています。

そのため、各監査法人がアドバイザリー部門の事業を成長領域として徐々に拡大させているのです。

監査法人のアドバイザリーとコンサルファームの違い

一般的に「コンサルティング」と呼ばれる業界の中でも、監査法人のアドバイザリー部門ならではの特徴があります。

通常のコンサルファームは、クライアント企業の成長戦略や経営課題に直結するコンサルティングサービスを提供します。一方、監査法人のアドバイザリー部門は、経営におけるリスクを排除するためのアドバイスを行います。

これがコンサルファームが「攻めのコンサル」、監査法人のアドバイザリー部門が「守りのコンサル」と称される理由です。

また、コンサルティングファームよりも監査法人のアドバイザリー部門の方が、比較的専門領域や担当業務が明確化されているケースが多く、自身の経験や知識を活かしたり、エキスパートとしてキャリアを形成したりしやすいのも特徴です。

さらに、コンサルティングファームでは、プロジェクトごとに支払われる報酬によって収益を確保していますが、クライアントの経営判断や業界のトレンドによって、受注にばらつきが出ることもあります。

その反面、監査法人は監査業務で安定的な収益が見込めるため、アドバイザリー業務に対して積極的に投資していくことができ、既存クライアントとのコミュニケーションの中で新しい話をキャッチしながら長期的に併走しながら支援していくことが得意です。

アドバイザリー業務の目的

多くの企業が事業の拡大やグローバル進出を目指す中で、ビジネスを前に進めるためには次から次へと湧き出るリスクを一つずつ潰していく必要があります。

一口にリスクと言っても、経営戦略における初期化説レベルのリスクや、システムリスク、他国でビジネスを展開することに伴うカントリーリスクなど様々です。

例えば、金融業界ではマネーロンダリングやサイバーセキュリティ、ヘルスケア業界では国ごとの規制対応など、業界ごとに高い専門性と多くの課題解決が求められます。

外部の専門家にしっかりと助言をしてもらうことで、リスクの最小化を図ることができ、目指すべきビジネス拡大に繋がるため、各企業は監査法人にリスク低減のためのコンサルティングを依頼するのです。

最近では、サステナビリティの領域に関する支援も増えています。例えば、各企業がCO2の排出量など、企業活動における重要なKPIを開示するにあたり、計測方法や結果が正しいかを第三者目線からチェックしています。

会計監査以外の領域でも、外部に開示する様々な情報を保証するための支援で、監査業務と通ずるものがあります。

サービス提供が可能なクライアントの制限有無

会計事務所は、法律により監査とコンサルティングを分離しなければなりません。

そのため、同監査法人ですでに監査役を担っているクライアントに対しては、提供できるサービスに制限があります。

例えば、経営戦略の意思決定に関わるコンサルや、財務会計を行うシステムに関わる業務は行うことができません。

スタッフの場合はアサインされたプロジェクトが開始する段階ですでに考慮されているため、あまり気にする必要はありませんが、マネジャー以上のクラスは案件獲得に向けたセールスを行う際に、担当クライアントとの契約やサービス提供の状況を十分に把握し、支援可能な範囲を提案することが必要となります。

Big4のアドバイザリー部門

ここまで、監査法人におけるアドバイザリー部門の立ち位置や業務内容を紹介してきましたが、監査法人の中でも大手である、「Big4」のアドバイザリー部門について、それぞれ紹介していきます。

「Big4」とは、KPMG、EY、デロイト、PwCの4つの大手会計事務所グループを指しており、それぞれ監査法人を有しています。

グローバルで事業展開する大手の監査法人であり、日本でも上場企業の大半がBig4による監査を受けています。

Big4の各監査法人では、アドバイザリー部門の売り上げが全体の15%以上となっており、中にはアドバイザリー業務が50%ほどの売り上げをもたらしているグループもあります。

監査法人はその名の通り監査業務を主軸として事業展開をしていますが、今やアドバイザリー業務は監査法人にとってビジネス規模を左右する領域となっているのです。

KPMG

KPMGのあずさ監査法人では、アドバイザリー統括事業部にて、コンサルティング業務を行っています。

金融業界を除く様々な業界に対して、経理・財務・会計の領域に特化したサービスを提供しています。(金融業界に対しても、同監査法人内の別部門にて専門家によるコンサルティングサービスの提供があります。)

経理・財務・会計はCFO領域と呼ばれ、業界ごとに専門性が求められるため、CFOの専門性と業界の特色を掛け合わせてアドバイスを提供できる点が強みです。

会計や財務の内部管理における改革、DX、M&Aの買収調査などの支援を中心としていますが、最近ではクライアントのグローバル化やSDGsへの取り組みなど、世の中の情勢を反映した支援領域の広がりも見せています。

EY

EYの新日本有限責任監査法人では、FAAS事業部にて、財務会計に関わるアドバイザリーサービスを提供しています。

クライアントのCFOが抱える経営課題を中心に、意思決定やモニタリング、財務情報の開示拡充などの場面で、EYの総合的な知見を生かした支援を行っています。

会計や財務報告の支援に加え、M&AやIPOなどのトランズアクションに関わる支援、財務会計ツールやプロセスの改善なども手がけています。

また、海外市場への上場や各国での会計基準に準拠した対応など、グローバル規模での支援が可能です。

デロイト

デロイトの有限責任監査法人トーマツでは、監査アドバイザリーとリスクアドバイザリーの2部門でアドバイザリーサービスを提供しています。

監査アドバイザリー部門では、規制対応や財務会計基準への対応など、会計監査の知見や経験を生かした支援を提供しています。

一方、リスクアドバイザリー部門では、財務報告の整合性や透明性を向上させるため、リスクを低減するためのサポートだけでなく、クライアント企業の全社的なストラテジックリスクに対応するための支援も可能です。

また、昨今のデジタル化に伴い、データを適切に管理して活用していくことが求められています。トランズアクションや個人のデータを保護しながらビジネスの拡大に向けて活用していくため、サイバー分野での支援も行っています。

PwC

PwCのあらた監査法人では、財務報告アドバイザリー部にて、アドバイザリー事業を展開しています。

金融や小売、ヘルスケアといったインダストリーと、監査や会計、デジタルやサステナビリティまでソリューションと呼ばれる専門分野を掛け合わせた組織形態となっています。

プロジェクト立ち上げ時には、案件内容に合わせてインダストリーとソリューションからそれぞれ必要な専門家がアサインされることで、クライアントが求める課題に適切に対応できるチームを作ることができます。

財務諸表や統合報告などに関する監査業務を中心に、クライアントの課題解決に向けたサポートをしていくことで、クライアントとの信頼作りに寄与しているのです。

まとめ

コンサルティング業界と聞くと、一般的なコンサルティングファームで戦略や業務、IT、人材などの分野で支援を行うイメージが先行しがちですが、クライアント企業の事業拡大を支えるために、リスクを最小化するアドバイザリー職という選択肢もあります。

特に、国内から海外まで、監査業務を中心に広いネットワークと多くの知見を持つBig4のアドバイザリー部門では、専門性を活かすことのできるチームやプロジェクトを見つけやすいかもしれません。また、大企業で安定したキャリアを歩むことも叶います。

コンサルティング業界への転職や、同業他社への転職を考えている方は、「攻めのコンサル」だけではなく、「守りのコンサル」も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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